雨が降るとドアが開きにくくなる。
梅雨どきに必ずそうなる。
「開きにくい」というのは改善された状態で
引っ越して最初の年は
「開かない。開いたらこんどは閉まらない」状態だった。
何度もパジャマのまま外に出て閉め出され
日々ドアと格闘を繰り広げた。
ドアはこの古家にもともと
ついていたドアだ。
威張っているドアなので
付け替えたかったが
ドアというものがそも
高価なことを知ってやめた。
ついに棟梁に来てもらった。
棟梁は青森出身なので
「こったらなっても
木ちゅうもんは生きとるだよぉ」と
青森弁でドアに語りかけ手で撫でただけで帰っていった。
本当に撫でただけなのだ。
もちろん請求書も来なかったけど。
どういうわけか不気味なのだが
それからドアは気持ちが穏やかになったらしく
人を敵対視するのをやめ
「開かないドア」から「開きにくいドア」に人格を変えた。(さ)