雪国ではときどき大きな音がして建物が揺らぎます。
震度なら3か4。屋根から雪が落ちる音と振動です。
いわば小さな雪崩です。
山の雪崩と較べると極小ですが、たとえていえば
近くで雷が鳴っているくらい大きな音がします。
ただ、雷ほど音は鋭くありません。大きいけれどやわらかな音です。
その宿ではどういうわけか雪が落下する方向は決まっていて
こちらの窓のそばで寝る人は夜中に驚かないでくださいと言われました。
そうか夜中に雪が落ちるのかと思っていたら
まだ風呂にも行かないうちからドドドドドと音がして
大量の雪が落下するのが窓越しに見えました。
風呂に入って晩ご飯もすんで酒を飲んでいたら、またドドドドがあり
私は窓から遠いところで眠ったけれど
その窓のそばで寝た人によると夜中もやっぱりドドドドときたそうです。
そうこうしていたら、朝食前にもドドドドの大揺れでした。
雪は音を吸収するので雪の雪国はしんと静かです。
ことに一軒宿で他に客もいないとなると物音ひとつせず
風景も写真のようでなにもかもしずまっています。
聞こえるのは何時間か置きのドドドドだけです。
雪が溶けたのではなく、雪が自分の重みで落ちるのです。
ドドドドと落ちても落ちても雪はまだ降っていて
雪の落ちた屋根にも落ちた雪の上にも降っていきます。
こんな日が何十日もつづいていました(さ)