烏山の中華の店は一軒とてもうまいところがあって、
というと料理の鉄人にも登場した店と思うかもしれないが
実はそうではないのだ。
あんなものは、まったくどうってことはない上に
テーブルに着くなりすべてのオーダーをいっぺんにせよと強要され、
しかも追加注文はできないという面倒な店なのだ。
面倒というよりは店本位制なのだ。
しかし、烏山には神の恵みともいうべきスーパーうまい中華の店があり、
なんともいえずダサイ名前とダサイ店構えと安い値段と
20時半でやる気をなくす店主のおかげで
取材もされずに無垢のままダサダサで生き残っている。
その店は食い意地の張った安西亭こと安西俊夫さんも大好きだった。
数年前まで安西さんは芦花公園駅に住んでおり
やっと乗れるようになった自転車に乗って、
夫人とおふたりで食べにいらしていたのだが
引っ越してからは、おそらく足遠くなっていると思い
ことに好きだと言っていた麻婆豆腐の写真(上)を携帯で撮って
安西さんに送ってみた。
しかし、よくよく考えると
春に変わった私の携帯アドレスを安西さんはご存じないはず。
夏の頃に会ったけど、アドレス変更は伝えていない。
見知らぬアドレスから見覚えのある麻婆豆腐の写真がが送られてきたら
安西さんはいったいどんな反応をするのだろうか。
そんなことを思いつつ写真を見てみたら麻婆豆腐が本当に黒い。
モロに中国山椒の黒さで、かなりの激辛で
辛いものに弱い私などはスプーン二杯でギブアップだが
しかし、うまい。辛いがうまい。
ひと口食べると走り出したくなるくらい辛いくせにうまい。
安西さん、元気かな〜。
と、しばらく会っていない人を思い出しながら
激辛をスプーン二杯食べて
激辛ではないものをたらふく食ったのだった(さ)