私にとってヒースというバーは「大川さん」であり
大川さんがいればどこでも「ヒース」なのだが
やれやれ、やっと銀座にもどってきてくれて本当によかった。
ここ何年かヒースは国立にあって、仕事が終わって駆け込むには
少々遠い場所だった。
ヒース銀座店の開店は本当は6月26日ときいていて
おおっ、ライブの日と重なったぞと思っていたのだが
幸い大川さんのペースがゆっくりになって開店日がズレてくれて
今週の月曜からということになった。
しかも開店したその場所が銀座の魔界ともいうべき路地で
なぜ魔界かというと、何度行っても覚えられない、
覚えたつもりでも迷ってしまうという客泣かせの場所なのだ。
その証拠に、ヒースの前はそこはアイリーン・アドラーというバーだったのだが
私はアイリーン・アドラーに行こうとしてまともにたどり着いたことが
何度かに一度という低い確率でしかない。
銀座を歩いている人の99%はまさかこんなところに路地があるとは思っていない、
そんな場所なのだ。
赤坂のホワイトラベルの店長も開店祝いに顔を出そうとして
案の定迷いに迷って銀座でうろうろしたそうだ。
その魔界の路地は狭くて暗くてエアコンの室外機がずらりと飛び出していて
路地を歩く客に熱風を吹きかける。
人よりもドブネズミの棲息に適した環境だが
そんななかに木造二階建ての築80年を超えようかという家が何軒かあって
ヒースはその1軒の1階を借りたのだ。
雑居ビルではなく木造の、空襲にも焼かれなかった生き残りの家が
こんな魔界にあることを知っている人が何人いるだろう。
あたらしいヒースは場所と建物の異常さだけで話題になりそうだ。
まあ、なんにしろヒースが銀座に戻ってきてくれてよかった。
仕事帰りに一杯飲める。やれやれだ(さ)