この写真の人と「結婚」という言葉を結びつけて考える人は
昨日までは誰もいなかった。
結婚しないことを心配はしていたが
「結婚」の二文字はこの人に近づくといきなり現実感を失い、
夢幻と化してしまうのだった。
いま現在38歳だが、48歳になって独身でいても
おそらく誰も怪しまなかったと思う。
それほど「独身」が似合っていたのだし
「佐藤くん=独身」というイメージは
ぬるま湯のようにみんなを心地よく浸していた。
そのぬるま湯は20世紀からつづくぬるま湯であり
21世紀も、もしかしたら22世紀もそのままつづき
前世紀のぬるま湯として保護ぬるま湯になるかもしれないと
みんな心のなかで思っていたのだった。
しかし、21世紀になって10年
ぬるま湯はついに自己変革の行動に出た。
いきなり結婚するというメールが来たのだ。
これが2行か3行のメールならば
石橋涼子のときや坂本和加ぽんのときのように
驚きのあまり「いまのはなかったことにしよう」と
削除してしまって、とりあえず忘れておき
1、2ヶ月かけてじっくりと現実を直視することもできたのだが
「佐藤くん=まだ独身」からのメールは長文だったために冗談だと思い
身構えもせずにうかうかと読んでしまったのだ。
読み終えて、まず佐藤くんの会社の社長の顔が浮かんだので
たずねてみたところ
社長からは「握手を求められました」という返事が来た。
次に林尚司くんの顔が浮かんだ。
林くんは「廊下をよろよろ歩いてました」と、石橋涼子が報告してくれた。
石橋もメールを読んで驚きのあまり林くんに助けを求めに行こうとしたら
廊下の向こうから林くんがよろよろ歩いてきたのだという。
みんな衝撃のあまり常ではない行動をしているのだった。
そういえば私もCDを渡すの忘れてしまったし
名雪祐平さんからは「え!いいな。結婚したい!してるけど」
という不思議なメールが来た。
昨夜はVisionチームの飲み会だったので
佐藤くんは女子に取り巻かれて囲み取材を受けていたが
ぬるま湯の表面温度が少し上がっているようだった(さ)