写真はママチャリ2号である。
1号は紺色だった。
世田谷に引っ越して来たときは自転車というものがなかったが
ある日、衝動買いをした。
当時住んでいた借家は駅から20分以上かかった。
徒歩7、8分という不動産屋の言葉を鵜呑みにしたのが愚かだったのだ。
それでも歩いていたのだが、
ある年の暮れ、買い物があまりに多くて重かった。
駅からタクシーに乗ろうとしたがタクシーが来ない。
待てど暮らせど来ない。
うんざりするほど乗り場で立ちつくしても来ない。
ついに逆上して近くの自転車屋で自転車を衝動買いするやいなや
飛び乗って帰った。自転車は快適だった。
通勤は歩いていたので、自転車はもっぱら週末の買い物専用車となり
日ごろは庭に置いてあった。
庭には三毛猫の一家がいた。
三毛猫の一族は私が引っ越して来る以前から庭に住み着いており
三毛の母も祖母も曾祖母もやさしい顔立ちの黒虎だった。
どういうわけか子供が生まれるとその子に庭を引き継がせ
自分は新天地に去っていく家風のようだったが
三毛は美人なのに気が強く、家風に逆らって子供を追い出し
自分が居座っていた。
この三毛とその子猫たちが自転車のカゴに乗る、
サドルで爪を研ぐといった狼藉をはたらいて
あっという間に自転車はボロボロになってしまった。
なにしろ猫が飛び乗ると三度に一度は倒れるのだ。
あまりに倒されつづけた自転車は主軸が狂ってしまい
微妙にハンドルを脇へ向けないと真っすぐに走らなくなった。
自分は歩道を向いているのに自転車は車道を直進するというのは
いかにも不可思議で気色悪く、しかも危険のような気がした。
これがママチャリ1号の末路であった。
ママチャリ2号も前カゴが歪んでいるので
ずいぶん倒されたのだと思うが
主軸が歪む前に三毛が発作を起こして死んだ。
三毛はもうけっこうな年齢で、そのせいか雄の子供が一匹
どこへも行かずに付き添っていたのだが
その付き添い猫も三毛が死んだ翌日に新天地を求めて去った。
それから私もいまの家に引っ越した。
どういうわけか、いまはママチャリに乗る猫がいない。
おとぼけくんもハエタローも自転車に興味を示さない。
もう横を向きながら自転車を走らせることもないだろう。
数時間前、ライブのチケットをポストに入れるために
ママチャリを走らせた。
風はなかったが、雪が降っており
もう歩いている人も猫もおらず、外はしんと冷えていた(さ)
ところで、静岡新聞のCM「インコ式」に
秘湯会ゲスト会員の向井潤一が出演しとるのを発見しました。
http://www3.shizushin.com/cm/
*Tokyo Copywriters' Street ライブ
詳細はhttp://tcss.seesaa.net/article/138169799.html
チケット申し込みは下のURLからどうぞ(指定席です)
http://form1.fc2.com/form/?id=391659
*お問い合わせは下のアドレスからメールで
tcsl@live.com