家で好きな音楽を聴くことがきわめて稀なので
趣味のCDを買うことは少ないが
たまに買うときは、頭の片隅で
「このCDは使えるか」と考えている。
つまりナレーションのBGMとして使えるかどうかだ。
ジャンルによっては考えるまでもなく使えないので
それはいっそ清々しく
ある意味パーフェクトに「私が買った私のCD」に
なってくれるからいいのだが
ときどき言葉に詰まってうろたえるほど困ったものに出会う。
たとえば、写真のCDはグレン・グールドだが
この中に1曲、素晴らしくいいテンポの、
つまり仕事に使いやすいテンポで弾いてくれている
アダージョがある。
しかししかししかし、歌っている。
歌っているのだ、グールド先生が。ピアノを弾きながら。
グレン・グールドの鼻歌は有名だが
ここまで、つまり弾いている曲の最初から最後まで
歌いっぱなしというのも珍しい。
使いたい。でも使えない。
未練がましく会社に持って行って
選曲用のCDの中に入れてはあるけれど
おそらく使えない。おそらくどころではない、
きっと使えない。
あんなに音がキレイなのに、あんなにいいテンポなのに
どうして使えないんだっ(さ)