朝8時前に起きたとき、大王は私の布団の上で寝ていた。
それから私はずっと一階にいて、
猫食器を洗ったり、メールをチェックしたり
届いた荷物を開封して段ボールを整理したり、マットを干したり、
ゴミバケツを回収したり、割り干し大根とアサリを煮たりしていた。
胡留さんはさっさと下りて来てご飯も食べたが、大王は来ない。
昼前に大王グループの住人が布団を干したので、
二階の掃除をした。窓を開けるので戸を閉め切るが
大王は片手で引き戸をカラッと開けて入って来てしまう。
かなり警戒を要するが、なぜかその日に限って大王は来ない。
ハタキ、掃除機、拭き掃除をして窓を閉めても大王が来ない。
廊下と階段と洗面所兼脱衣所の掃除もしたけど大王は邪魔をしに来ない。
そのうち、おかしいなということになった。
大王がいないんじゃないか??
大王グループの住人が青くなった。
しかしだよ、マットを干したときもゴミバケツの回収のときも
大王は玄関から出ていない。それは自信がある。
理論上、大王は家の中にいなければならない、ではなく
理論上、絶対に家の中にいるはずなのだ。
私はたいして心配もせずにパソコンに向かっていたが
大王グループはあちこちさがしている。
二階の押し入れも洋服ダンスも納戸ものぞいているようだ。
しかも、かなりうろたえているな、あの様子は。
大王は基本がやかましい猫なので、
外に出たとしたら中に入れろとワオワオ騒ぐんじゃないかと思う。
家出をしようという意志がゼロのくせに
飼い主の足元からするりと抜け出すのは上手で
いままでも2回くらい外に出たことはある。
しかし、外に出たもののそれは玄関の外に単に出たというだけで、
「ふ〜ん、これが世田谷のはずれか」みたいな感じでボーッと座ったとたんに
がしっと回収できている。
「するっ、ボーッ、がしっ」の3連符だ。
そんな大王が外に出て閉め出されて静かにしているはずがないんだがな。
「入れて入れて」とやかましいと思うんだがな。
しかし、そのときの家の中は大王がいないみたいに静かだった。
騒いでいるのは大王グループの住人だけだ。
まあ、そんなわけで私も探索に加わることにした。
あからさまには怪しいのは、我が家の秘境と呼ばれている勉強部屋だ。
あの乱雑さはかなり凄まじいが、猫にとっては居心地がいいらしい、
まっしぐらにそこへ行ってテキストを並べてある棚を見たら
本と本の隙間から茶色の前足が見えている。
おいこらっ、この茶色の物体は何なのよっ!!
本当に人騒がせな大王グループだ。
連休一日めからうるさいったらありゃしない。
人も猫もなんであんなにアホタレなんだろう。
こんなグループと暮らすのはもう嫌だよね、胡留さん(さ)