ごめんね、私は知っていたというようなことが、たまにありますね。
花組芝居の水下きよしさんが1月24日に永眠なさいまして
facebookやTwitterには悲鳴のような驚きの声や嘆きの声が
さまざま寄せられています。
水下さんは昨年、
12月21日に
Tokyo Copywriters' Street の収録にお越しくださり
小野田隆雄さんのストーリーを読んでくださったのですが、
その朗読をお願いしたときに
ご自分の状況をつぶさにメールでお話くださいました。
7月に癌が発見されたこと、それからの治療の経過、
治療しながら演出の仕事はなさっていたこと、そして現在の治療の状況と、
声と気力はちっとも変わっていないことなどが丁寧に書かれてありました。
それはいかにも水下さんらしいストレートなメールで
余計な言葉がひとつもなく、
客観的にご自分の病勢と向き合っていました。
あらためて、この人は凄いなあと思いました。
そしてそれら一部始終は発表しないように頼まれていました。
さて、その収録当日のことです。
時間になっても水下さんがいらっしゃらないので
メールを出してみました。
年末で、毎日のように電車が止まったり遅れたりしていたので
そういう理由なら心配はないのですけれども、
もしこちらへ向かっている途中で気分が悪くなるようなことがあれば
無理をしないでいただきたかったので、そういうメールを出しました。
すぐに返事がかえってきました。
「大丈夫です。後ほど愚僧がまいります Miz」
ぐっぐそ〜〜??ぐそう??愚僧??
いきなりの「愚僧」にびっくりしました。
愚僧って...ななな、なんのことですか、水下さん??
何の冗談かと首をかしげたのですが、重ねてお伺いもせず、というか
間もなく本人があらわれるわけですからその必要もなく待っていたら
やがて頭を丸めた水下さんがにこやかに登場なさいました。
なるほど、愚僧...
頭を丸めた水下さんは(失礼ながら)いつもよりかわいらしく、
そしてよく響く大きな声は相変わらずで、
ふと足元を見るとおしゃれな靴下を履いていました。
その靴下の写真を撮らせていただいて、ではではとお別れをし、
うかつにもそれが最後になるとはちっとも思わず
その後もメールのやりとりなどしていました。
ひと言の愚痴もお書きにならなかったし、
あのときの声はしっかりと大きな声だったので
ことがこれほど差し迫っているとはちっとも気づきませんでした。
当時私が調べていたマタギの里秋山郷にたいへん興味をお持ちになり
行ってみたいとおっしゃっていましたが、なにしろ雪深い土地ですし、
春も長けて道路の雪が溶けるころになったら
ご案内できる機会もあろうかとノーテンキなことを考えていました。
昨日はまた
Tokyo Copywriters' Street の収録で
読んでくださる人たちはみなさん演劇の仲間でもあるので
終わったら一杯飲んでいただこうとお酒を用意して
その説明のかわりに水下さんの写真を貼っておきました。
それが上の写真です。下は水下さんのおしゃれな靴下です(さ)
* Tokyo Copywriters' Street の水下さんの作品は下のURLから
http://www.01-radio.com/tcs/archives/tag/水下きよし
原稿の下のyoutubeの画面から音声が聴けます。
そのyoutube画面をクリックすると直接youtubeに飛びます。