映画「ダ・ヴィンチ・コード」の続編である「天使と悪魔」には
反物質というものが爆弾として使われています。
数日前にちょっと予告したものですから
これからこの反物質をごく簡単に説明してみようと思うわけです。
いま、この宇宙には反物質はほぼ存在しないと考えられています。
さかんに存在していたのはビッグバン直後です。
ビッグバンの高温のなかでエネルギーは物質になります。
上の1行を正しく説明するだけでもタイヘンなんですよ、実は。
高温といっても、いま我々が暑いわ〜とか言っているレベルではなく
「兆℃」の「兆」倍というレベルです。
想像もつかないというか、考えたくもありませんね、
わずか35℃でも十分に暑いのですから。
そして「直後」という時間の概念も1兆分の1秒とかいうレベルです。
さらに、物質といっても「鉄」とか「酸素」とかのレベルではなく
素粒子です。クオークやレプトンです。
さて、光あれと誰かが言ったからではないと思いますが
ビッグバンという見たこともない事件が起こりまして
高エネルギーの光のなかで物質、つまり素粒子が生まれました。
それと同時に反物質、つまり反素粒子も生まれます。
いわば+と−が対になって生まれるので対生成といいます。
この素粒子と反素粒子は出会うと消滅してエネルギーになります。
これを対消滅といいます。
ビッグバン直後はこの対生成と対消滅がはげしくおこなわれていました。
そのうち少し温度が下がります(といってもまだ兆×兆の世界ですが)
すると、もう生成はおこなわれず消滅だけになります。
ここで不思議なのですが
とても簡単に説明しますと、ひと粒の光(光子といいます)から
素粒子と反素粒子がひとつづつ生まれ
それが出会って消滅していったとしますね。
結果、宇宙には何も残っていないはずなのです。
でもここに私たちは存在します。
実はこのへんの不思議はまだはっきりとわかっているとはいえません。
でも、10億にひとつかふたつ、相手がいなくて消滅できなかった素粒子が
いるのではないかという考えがあります。
ペアを組むことができなかった孤独な素粒子です。
その素粒子からいまの宇宙ができています。
宇宙も星も人も、みんな孤独な素粒子からつくられたと思えば
みんな多少さみしがりやなのは仕方のないことですね(さ)