床に血がついていた。
台所に二カ所、宴会部屋にもある。
このとき疑う相手はひとり、いや一匹しかいない。
ハエタロー、ちょっと来なさい。
うにゃん(いやん)というのをつかまえて点検させてもらった。
あ、胸に傷。ぱっくり口が開いている。
違うな、これは先々週の傷だ。まだふさがっていないのね。
それをのぞくと背中も腹も横腹も尻尾も異常なし。
前足もOK、後足....あ〜、ここだ。
後足に噛まれたような傷があった。けっこう大きな傷だ。
さては逃げようとしてつかまってやられたか。
ちょうどステロイドも切れていて食べなくなっていたので
医者へ連れて行った。
「あ〜、これは逃げるところをやられましたね〜」
それはわかってますってば。
胸の傷は向かっていった傷だが、後足の傷は逃げ傷だ。
鬼平犯科帳に登場する井関録之助が
正面の傷なら死んでもいいが背中の傷は恥ずかしいと言っていた。
武士の逃げ傷はかなり恥ずかしいものらしい。
猫の場合はどうなのだろう。
やっぱり逃げ傷は落ちこむのだろうか。
逃げ傷で落ちこむというよりはケンカに負けたことで
落ちこむのかもしれないな。
こころなしか意気さかんとはいえないハエタローと
そのハエタローを寒くなる前に洗いたいのに
これだけ傷だらけでは洗えやしない飼い主と
お互いにちょっと困った硬直状態なのだった。
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