サルスベリは猿滑と書くが百日紅ともいう。
百日紅はサルスベリと読んでもいいし、ヒャクジツコウでもいい。
わりとややこしい花だ、というか木だ。
8月になるとサルスベリが咲く。
よくこのクソ暑いときに咲く気になるもんだと思うが
街路樹のサルスベリが咲くのはやはりうれしいもので
花のある方へある方へと遠まわりしてしまう。
以前は私の庭にもサルスベリがあった。
植木屋1号が持ち込んだときに「うっ」と思った。
「うっ」の原因はまず賑やかな花が咲くことで
あまりに狭い庭にこんな賑やかなものが来るのはどうかと思ったのだ。
もうひとつは植えかたにある。
植木屋が植えたサルスベリはやや前傾姿勢をとっている。
前傾というのはおそらく盆栽の植えかただと思うのだが
それだけ我が庭が狭いということなのだろう。
背後はすでにして塀なので、当然ながら家に向かって「行くぞ」と前傾している。
木は大きくなる。葉先がさわさわと窓に当たるほどはかまわないけれど
枝も葉も一緒になってぐいぐいと窓ガラスを押してくるようになると
心穏やかではいられない。
サルスベリを撤去してくれたのは植木屋2号だったか
それともいまお世話になっている3号だったか忘れたが
ともかくいま私の庭にサルスベリはない。
ところで、街路樹のサルスベリは春か夏かの間くらいに
よくウドンコ病にかかって葉っぱが粉をふいたようになっている。
風通しが悪いといけないらしいが
そのわりに湿度が低い時期に発生するのは
乾いている環境の方が菌が広がりやすいせいだ。
原因になる菌の名前がまたウドンコカビ科というのだから
うどん好きの人間としてはあまりうれしくない。
そういえば今年のサルスベリはウドンコ病になっていなかった。
発生しやすい時期にじめじめしていたからかしら。
サルスベリがいなくなって後、庭に前傾姿勢の木もなくなった。
植木屋好みの、樹形の美しさを楽しむような木がなくなって
雑木だけになったということだと思う。
しかし窓に向かって攻めてくる木は危険だし
留守中にガラスが割れたらと思うとおちおち仕事もできないし
雑木でけっこうなのだ、まったく(さ)