このウイスキーは初代山崎のシングルモルトだ。
初代山崎にはエイジング表示がない。
アルコール度数は43%、容量は760ml。特級の表示がある。
発売開始の年もわかっている。
ボトルと一緒にカードが入っていて
例のごとく佐治敬三社長の挨拶文が日本語と英語で書かれているからだ。
それによると山崎はサントリーのウイスキーづくり60周年を記念して
発売されたとある。
山崎蒸溜所の建設がはじまったのが1923年、
1924年の12月からウイスキーづくりをはじめたのだから
60周年を記念するならば初代山崎の発売開始は1984年だ。
当時はシングルモルトを飲むのはかなりマニアックな酒飲みだった。
そのせいか、シングルモルトという言葉を使わずに
ピュアモルトという言葉を使っている。
さて、ここからがややこしいのだが
発売開始が1984年として、このボトルは何年のものだろう。
初代山崎には全身金色の60周年記念ボトルが存在しており、
金色タイプは間違いなく1984年の発売だと思うが
通常ラベルのこのボトルは?
例によってデータから推理していくと
佐治さんは1990年の3月に社長の座を降りて会長に就任している。
だから「佐治社長」の挨拶文があるこの山崎はそれ以前のものだ。
さらに特級表示がある。特級表示は1989年の3月までだ。
もうひとつ、私には何年と特定はできないが
760mlという容量問題がある。
ウイスキーのボトルの容量は760ml、750ml、700mlの変遷をしている。
(日本では720mlという四合瓶サイズもあって、昔の角瓶がこれ)
これは次第にケチになったというわけではなく
イギリス基準の6分の1ガロンで760mlだったものが
4分の3リットルの750mlになったのだ。
ガロンは英米で量が異なり面倒きわまりないので
いっそ世界基準のリットルにしましょうという傾向が広まったのが
1980年代になってからだが
1980年代の半ばには750mlが主流になっていたらしい。
ちなみに1989年発売のプレステージは750mlだった。
ついでに述べると、
700mlが世界基準になったのは1991年のEUの決定からで
スコッチもそれ以降は700mlになった。
これはフランスのブランデーの700mlを基準にしたそうだ。
日本のウイスキーもそれ以降は700mlに統一されていくのだが、
それ以前はというと、
1999年は山崎12年と18年が750ml、響が700ml。
2001年の新オールドは700ml。
たとえば2006年の父の日セットを見ると、
角瓶とオールドが700ml、リザーブが750mlのままだった。
(現在はリザーブも700ml)
ところで、アメリカの基準はいまでも750mlなので
特に日本向けに用意されたのでなければバーボンは750mlだし
もしかしてもしかしてアメリカに輸出する日本のウイスキーは
いまでも750mlかもしれない。
こんなことを書き連ねているとキリがないが
この初代山崎のシングルモルトは1984年の発売開始から
それほど時間差はないと推測できると思う。
最後に備忘録のように書いておくと
この初代山崎の次は1992年の山崎18年が発売され、
'95年には山崎10年が、創業100周年の'98年には山崎25年が発売されている。
古いウイスキー1本で飲む前からこんなに楽しめる。
ホントにウイスキーはやめられません(さ)