1株に赤と白の花が咲くのを源平咲きという。
源氏の白旗、平氏の赤旗というわけで
わざわざ紅白といわず源平とするところが洒落ていると思う。
ここでちょっと説明をすると
たとえばいまの日本の国旗は縦横比が7:10と決まっている。
アメリカは10:19、イギリスは1:2、フランスは2:3、
どうもみんな好きずきにバラバラだけれど、だいたいが横長だ。
ところが源平の白旗赤旗の時代はずいぶんと縦に長い。
旗というより幟のサイズで、
これを上だけ固定して風にひらひらなびかせていた。
早い話が洗濯物のようでもあった。
赤や白の無地であるならば
それは旗というよりも危うく懐古的な男性下着を想像させるが
やはり旗だけあって旗であることを主張する意匠が凝らされていた。
さまざまな文字や紋、ときには南無八万大菩薩などという文字が見えると
やはり下着にはなりにくいと思われる。
さて、旗の説明に手間取ったが、その源平咲きだ。
サツキや梅ならば愛好家もいてお値打ちもので
赤花に白花の木を接ぎ木して人工的な源平咲きをつくることもある。
けれども、チェリーセージは
源氏とも平氏ともかかわりのない原産地メキシコで
いつの間には源平咲きが生まれていた。
発見者はサンフランシスコの園芸雑誌の編集者で
彼のメキシコ人の家政婦がメキシコの自宅から持ってきたものだそうだ。
家政婦としても、自分の実家に咲いているセージが
世界中のどんな図鑑にも載っていない新種とは思わなかったらしいが
いまでは世界の市場にデビューもし、
ミクロフィラ・ホットリップスという長い名前も持っている。
写真の源平チェリーセージは
駅近くのマンションの植え込みに咲いているのだが
そういえばこの花にわざわざ目を止める人は誰もいない。
源平くんが頑張って藤か橘かもう一色か二色増やしても、
たとえそれが世界初の四色咲きであっても
もしかしたら誰も気づかないかもしれないぞ(さ)