秘湯会の会長と副会長は
フォッサマグナに何の感心もないが
フォッサマグナの西縁の温泉にはよく行っている。
ここで説明すると
フォッサマグナというのは糸魚川—静岡構造線と
新発田—小出構造線、柏崎—千葉構造線にはさまれた、
北陸や信越の一部と関東の大部分を含む地域のことをいう。
フォッサマグナとはあくまでも線ではなく面である。
およそ2500万年前ころから日本列島が大きく裂けはじめ
1600万年ころにはいまのフォッサマグナの地域は完全に海になっていた。
糸魚川—静岡構造線の西は古生代の地層が残り
東は新生代の地層になっているのは
フォッサマグナ地帯が新しい堆積物や火山の噴出物で
構成されているからだ。
この劇的なフォッサマグナの断層のたまものとして
数多の温泉がある。
亀裂の多い断層が地下水を蓄え、
地熱に熱せられて温泉と化すのだ。
意外と気づかない事実だが、温泉の形成には熱と水が必要で
地下水がなければいくら火山があっても温泉は湧かないが
逆に地熱は100メートル地下に下がると2~3℃上がるので
1000メートル下から汲み上げた地下水は
火山のマグマがなくても温泉の温度になっている。
さて、秘湯会が行った温泉は長野県の北、
フォッサマグナの西縁に近い小谷温泉だった。
小谷温泉は日本百名山のひとつである雨飾山の登山口で
早い話が山の中腹であり、標高も1000メートル近くあって
ブナの林があり、夏も涼しい。
この雨飾山そのものが、かつて火山から噴出したマグマが
比較的ゆっくりと冷え固まった閃緑ひん岩で形成されているのだが
フォッサマグナに何の興味もない秘湯会は
その岩石のもろさも、新生代第三紀の隆起も知らず
ひたすら温泉につかって気持ち良さそうなのだ(さ)